話の早い人がいい


二人の営業マンに会った。
分野は車と金融。どちらも支店長になってもいいくらいの年配だが、役職はない感じで一営業マン。共通するのはふたりとも仕事を楽しんでいること。ひらりとした嫌味のない会話っぷりにそれがよく表れている。こういう人は要点は必ず話してくれるから、そもそもこちらから聞くことも少ないのだが、質問にも的確に答えてくれる。聞くうちに、こちらの考えも秒針がゆっくり進むように、整理されていく。

車のほうは、その車の長所・短所を端的に説明してくれるや、好きなだけ試乗してください、私ここで別の仕事してますんで、と鍵をくれた。いきなり青空の気分。信頼してくれてるな、と嬉しく思い、好きなだけ試乗した。(結果、買わなかったけど)

金融のほうは、定期預金のキャンペーン概要を実にわかりやすく説明してくれたあと、さらに、今、定期をすれば小さないいことありますよ、隣接のショッピング施設のポイントカードにポイントがたまります、と淡々と教えてくれた。ささやかながら定期預金をすることにし、ポイントカード持ってないですが、と言うと、カードの概要と作成場所も的確に教えてくれた。その実にスムーズな流れに押されるように、またその流れを止めまいと、その施設でポイントカードを速攻で作って戻ると、そのロマンスグレーの営業紳士がちょっと驚いたように微笑んで独り言のようにこう言った。

早かったですね、10分くらいでしょうか
その言い方には品があり、可愛らしさもあり、好ましく思えた。同時に、おや、なかなか機敏ですねと褒めてくれているようで嬉しかった。話が早いもの同士が分かり合えた幸せな瞬間。

 

僕が女なら、こういう人と結婚したい。なんて思いながら銀行を出てきた。


話の早い人は気持ちのいい風のようだ。話の早い人がいい、つくづくそう思う。