前世のこと

 

前世があるかないかと言われれば、あると思う。生き物としての素となる魂は、肉体とは別に時空を超えて流通するような気がするので。

で、僕の前世は何かというと、自分で思うに候補がふたつある。ひとつはムシ。タンスの防虫剤のにおいがたまらなくキライなので。子どものころ、王選手のサインボールをもらってとても嬉しかったのだが、くれた人がタンスにずっと保管していたらしく、いつまでたっても硬球の皮にしっかりタンスの匂いが染みついていて、そのボールを手にとって眺めると強力に匂うのだ。眺めたい、でも匂いはイヤのジレンマ。でも、不思議なもので、いやなにおいと分かると、かえって鼻を近づけてそのイヤさ加減を再確認したくなる。そういえば、小学三年くらいのとき、友達が四人ほど家に遊びに来て、なにかの拍子で、ぼくの股間が(ニット地の短パンのようなものをはいていたと思う)香ばしいにおいがすると友達のひとりが言い出して、他の三人も俺も俺もと、かわるがわる僕の股間に鼻を近づけてくんくん嗅がれたことがある。みな、無言で静かな時間だった。話がそれたが、とにかくそのボールを手にしただけで軽く頭が痛くなった。 「はなもちならない」という言葉がある。あまり日常では使わない古典的な表現だが、「鼻持ちならない」と書くのだそう。僕にとってタンスのナフタリン系の匂いは、まさに鼻持ちならないもの。というわけで、前世候補としてムシである可能性は非常に高いと思う。
 
 そして候補のもうひとつは犬。それも狩猟犬タイプの。犬が公園などでボールをご主人様に放ってもらって一目散にボールめがけて駆けていく姿を見かけるが、僕もノックを受けるのがとっても好き、フライを打ってもらって追いかけていくのも、キャッチするのもすごい快感なのだ。

 ところで、政治家というのは、ひとつまえの前世は確実に獣だと思う。狸、狐、狼、猿など。顔にアリアリと現れている。国会議事堂なんてものは前世動物園のようなもの・・・。