耳散歩

気がつけば、緑がえらい気持ちのいいことになって居る。
この季節、好きなんだった。
ちょっと湿気をはらみながら、むっとなる一歩手前の空気。植物がわさわさ元気だ。
近所の緑道を自転車で走ると、池には・・・いた!毎年恒例のカルガモの赤ん坊。もう大分大きくなってる。今年は4羽。生まれたのはこの倍くらいいたはず。ちょこちょこ泳ぎ回るのをしばし眺める。

自転車で走っていると、歩行者の会話の断片が耳に飛び込んでくる。なにしろこちらは瞬時に遠ざかるので当然ながらその後の会話はまったく聞こえない。その断片だけが、耳にへばりついたまま自転車を走らせることになる。


まず、下校途中の小学生女子グループを追い越すときにこう聞こえた。
リンゴジュースにあやまって!
給食で誰かがこぼしたか。なんだかわからないが、ここはひとつあやまってほしい、と思った。しかし、なんかキャッチーなフレーズ。このタイトルで曲ができそう。

次に、足元でじゃれあう子どもたちを跨ぐように立ち話をする若い母親たちの前を通りかかったとき、こう耳に入ってきた。
荷造ろいでお化けとかしないで
荷造ろいでお化けをする?いつだれがどこで?まるで意味不明だが、やらかしたのは子供なのだろうか。もしかしてダンナ?荷造ろい中にバァーッと驚かそうとして、家族にたしなめられたのだろうか。

ここで故・細川俊之によく似た二十代後半くらいの女性とすれ違う。

それからサラリーマングループを追い抜くとき、そのうちのひとりがこう言った。
シンちゃんは女だから

なにやら諦観を漂わせた言い方だった。
職場の女子社員シンちゃんは、なにかにつけ女であることを言い訳にしてるのか。あるいは日ごろ男っぽいのに、なんかあって急に女が出たのか。はたまたシンちゃんは実は男社員で、肝心なときに逃げて女みたいになるのを責めてるのか。想像はつきませんが、シンちゃんの言い分も聞いてみたいところ。

会話の断片は話を全部聞くよりおもしろいかも。
そう思いながら青いバナナひと房ときな粉を買って帰りました。

                                 12.06.07