長新太はおもしろい

 

長新太の絵本は自由自在だ。

たとえばこんな。

海と浜辺が見開き一面に描かれ、ページをめくるたびいろんなものが浜辺に流れ着いてくる。ある日はすべりだい、ある日はよっぱらい、そしてある日はなんとなんにもなし!
あるいはこんな。

ぼく(たぬき)はある夜湖のほうで音がしたので行ってみた。そしたら月が山からすべりおちて、湖につかってた。
と、いう具合。

昨秋、横浜そごう美術館に、長新太展を観に行ってきた。77歳で亡くなるまで、自分のやりたいことしかやらなかったという長氏。いくつか印象に残ったことがらは

・初めて商業的な賞をもらったとき、たいそう嬉しかったそうだが、それは「これからは好きなことができる」と思ったから。

・奥さんへのインタビューの資料があり、「生活はたいへんで、私はたいへんだったわよぉ。ずっとお金のことばかり心配してた」とちゃきちゃきと語られてた。また、インタビュアーが長氏の作品を偉大なるものとしてアート方面へもっていこうとするも、奥さんは「そんなことないわよぉ」と切り捨てていくのがいい感じだった。

・その奥さんは、長さんがふらっと旅行に行きやすいように、旅行の着替えしたくを入れた旅行かばんを常時揃えていた。それも旅行日数別に何種かを。

・長さんの仕事場のレイアウトが長い年月を経て、ほとんど変わっていなかった

展覧会で買って帰ったのは「ながいすべりだい」という絵本。山全体を周回するすべりだいでこどもが下りてくるはなし。すべりおりる途中には雨が降ったり、雪がふったり、かえるがいたり、にんぎょうがいたり。斜面にそって、一筋続くすべりだいを「するするするする」とすべり降りていくこどものうしろ姿の絵がとても好き。空には星。

さて、この絵本の次の一節はそれだけで人生のすべてのよう。

「まだまだ つづく ながい すべりだい」

そして最終ページはこう。

「ああ おもしろかった ながいながい すべりだい」