母なる証明 (2009年韓国)

 

秀逸なストーリーって、主役を劇中に登場する他の人物に置き換えても成立すると思う。ラスト近く、犯人にしたてられた人物が、ピントがぼけた画面からやおら浮かび上がってくる。この人物を主役として彼目線にして映画を作っても十分な成立しそうなストーリー。殺害された少女しかり。つまりはストーリーに奥行きがあるのだ。

そしてまた犯人にこの人物をもってきたことに作り手の容赦なさを感じた。そんなのありか?という疑問とともに。

ウォンビンの演技がいい。石を放ってからあと、携帯を何度も見る、特にそのところ。

このウォンビン、実際どれくらい一連の事態を把握してるのか?また最後にウォンビンが母親に手渡したもの、それにはどのような気持ちがこめられているのか?そのことがいかようにも推測でき、それがこの映画のあと味となっている。そして、それを受け取った母親の表情から一気にラストへもっていく圧倒的な展開がすごい。

音楽がいい。なんともせつなくて。冒頭とラストに母親の踊りがでてくるが、実際この音楽に合わせて母親は踊っているわけではない。だが母親の心の中に流れるのはまさにこの音楽だろう。

邦題はちょっとこの映画にはそぐわない。原題の「mother」以外のなにものでもないと思う。