変態男 (05年 ベルギー・フランス)

 

 まずオランダ語の言葉の響きと、美男美女がまったく出てこないところが新鮮。
 ドライブ中のアベックが理不尽にも中年男の車に追跡され、アベックの男は殺され、女は中年男の車のトランクルームに監禁を強いられる。というひたすら強引な話の展開なのだが、映画中盤から、この主人公の中年男、実はまったく変態ではなく、むしろ男をとりまくまわりの人物たち(男の妻、友人の警官とその母親、刑事ら)こそが変態ぞろいということに気付く。そして、そのあたりから映画は俄然おもしろくなってくる。そもそもこの邦題なんとかならんのだろうか?原題は「Ordinary Man」なのに。


 車のトランクルームに閉じ込められた女性は、ウンチをもらしてしまったりするのだが、そのあと男に風呂にいれてもらって湯船でボーゼンと佇むシーンがなんといっても見どころ。でも彼女、だんだんトランクでの暮らし?が居心地のいいものになってきたのか、灯かりを男に付けてもらって読書など楽しんだりして、そのあっけらかんとした無表情ぶり(実は声帯が取られてしまっているワヤな状態なのだが)、が愉快。たまに風呂に入るためにトランクを出るのだが、入浴後はまだ自分からトランクにもどって、ついには自分からトランクの扉を閉めたりする始末。


 そして物語はこの女性が意外な行動にでて、事件はあっと驚く展開となる。あっとは驚くが、ナットクというかんじもする。
 ラストシーン、いいなと思った。幸せとは、居心地のよい生活とは何かを考えさせられた。トランクで横になって読書をしながらの旅行もいいかな、なんてやっぱり思えないが。(07/1/28)