ノルウェイの森(10年日本)

 

まずは登場する役者がすべてよかった。

したがって僕はこの比較的長尺の映画、少しも飽きなかった。
ただひとり、排ガス自殺したキズキ君が60年代末という時代に合ってなかったように思った。一番良かったのは、遊び人の先輩永沢。次点に緑。

死が三つでてくる。僕は原作を読んでないが、かなりのエピソードや人物説明が抜けてるらしい。そのせいか死の背景が分かりにくく、そこにただ放り出されている感あり。しかしながら、これらの死はストーリーの根幹でもあるわけで。
だから映画全体もテーマがぼやんとなって、ただ肌触りを楽しむしかないような印象がある。で、僕はその肌触りを楽しめた。

好きなシーンを三つ。
①直子が、誕生日のケーキを前に「火を消してもいい?」とつぶやくように主人公に聞くところ。
②喫茶店?内で、緑が、入場行進のような歩き方で主人公の前にたどりつき、すっと手をだして仲直りの握手を求めたところ。
③わさわさ弄りあう男女を片隅に配置し、緑の山や雪山をロングで撮ったシーン。映画館でしか味わえない、大きい映像だった。

音楽がよかった。CANという人がやってるらしい。シンプルでせつなくて。

ただ、直子の死、主人公の慟哭シーンの、ホラー映画っぽいギュルギュルギューっとした音効果はやめてほしかった。僕が監督なら無音にする。ついでに僕が監督なら、なんぼファンでもYMOのふたりは出演させない。


この話に「ノルウェイの森」、というタイトル、粋だなぁと思う。

死んだ人はそれ以上、歳をとらない。その時代に聞いた曲とともにいつも色褪せずにそこにいて動き出したりもする。そしてその曲を聞いてる「ぼく」は、今どこにいるのだろう。

 

それにしても協賛企業がやたら多い。レトロな雰囲気を再現するのに各方面の協力が必要だったのだろう。でも、社名垂れ流しのエンドロール、外国の粋な映画はやらんだろうなぁ。