アバター (09年 アメリカ)

 

 星新一のショートショートに、地球に来訪した異性人と地球人が儀礼の接吻を交わすが、地球人が勝手に口と思いこんでいた箇所は実は異性人の肛門だった、というオチの話がある。アバターでもラスト近くに、異性人との接吻シーンがクライマックス的に挿入される。このキスを違和感なく生理的嫌悪感なく見せるために、この異性人の口元はまるで人間そっくりにデザインされている。歯並びなんてきれいすぎ。これが実にしらける。このシーンのためにアバターの存在自体が一気に作為的になり、ああ作り物の話しだな(実際、作り物なんだけど)、と思ってしまう。星新一の話は極端な例としても、異性人の口などどこにあるかわからないのだ。それがリアルというものだ。

 3Dに関しては、昨年見たアニメ「モンスターvsエイリアン」のほうが単純に楽しめた。3Dは現実世界のようにリアルに見えるというものではなく、一種の見せ方の妙だと思う。これにはヒューマニティ溢れるようなストーリーよりも、ひたすら荒唐無稽でばかばかしい話のほうがぴたりとくると思った。

 またこの星、観ていてばくぜんと屋久島を思った。緑を基調とした雰囲気とか滝とか。そしてこの星では翼竜のようなものが幅をきかせているが、屋久島も豊かな自然のわりに哺乳動物は猿と鹿しかいない。雰囲気のみならず実に生態系も似ているのだった。